まず、次の事案を考えてみてください。
あなたはスポーツ団体の事務局スタッフです。サッカー教室のベテランコーチが、練習中にある児童を強く叱責したようです。後日、保護者から「子どもが行きたがらない」と相談が入りました。他の保護者の多くはそのコーチを支持しています。あなたは、まずどのような対応を取りますか?
おそらく、あなたの頭に浮かんだ対応に大きな間違いはありません。問題はそこではなく——「同じ団体の別のスタッフでも、同じ対応になるか?」です。
一番まずいのは「人によって対応が違う」こと
不祥事対応で最悪なのは、対応するスタッフやその日の気分によって動きが変わることです。ある人は謝罪から入り、ある人はコーチを庇い、ある人は放置する——こうなると、団体としての信頼は一気に崩れます。
必要なのは団体としての対応の「型」(規程やマニュアル)です。
スポーツ仲裁機構が示す対応の基本
日本スポーツ仲裁機構が公表しているガバナンスガイドブックでは、不祥事が起きた場合、まず迅速に事実関係を把握するため、本人や関係者から詳細な事情聴取を行うとしています。
ここで重要な注意点があります。団体内部の役員だけで調査すると、従来の人間関係から公正中立な調査を期待できないことがある——そこで、弁護士や大学教員など団体外の有識者が関与する調査を検討すべきとされています。有識者の確保が難しい場合は、市町村の主管課や都道府県スポーツ協会へ相談し、一緒に聞き取りをしてもらうケースが多くあります。
4ステップを規程に落とし込む
- 受付——誰が相談を受けても同じ窓口に集約されるルート
- 調査——可能な限り第三者を交えた事実確認
- 処分——倫理規程・処分規程に基づく判断
- 再発防止——原因分析と仕組みの見直し
自前で倫理規程・処分規程を整備するのが難しい場合は、日本スポーツ協会の公認スポーツ指導者処分規程や、スポーツ少年団の指導者規程に準じる旨を規約に明記しておく方法があります。これだけでも「型がない」状態からは大きく前進します。
型がなかった団体で実際に起きたこと
2019年、ある県の小学生バレーボールチーム(スポーツ少年団)で、監督による体罰事案が全国報道されました。報道によれば、連盟は被害児童や保護者に一切聴取せず「暴力はナシ」と判断。一部の保護者が事実を外部に漏らさないよう誓約書への署名を迫る事態にまで発展し、のちに監督は永久追放、チームには解散勧告が出されました。
初動の「型」があれば、少なくとも聴取なしの判断や隠蔽の連鎖は防げたはずです。これはどのような団体でも起こり得ます。
出典
- 日本スポーツ仲裁機構(スポーツ団体ガバナンスに関するガイドブック)
- NO!スポハラ(日本スポーツ協会ほか)
編集後記
冒頭の事案、ぜひ次回の運営ミーティングでスタッフ全員に書いてもらってください。回答がバラバラだったら、それがあなたの団体の現在地です。ガバナンス不足を洗い出す4ステップもあわせてどうぞ。
— 地域スポーツ運営ナビ 編集部