経営・運営

「何が足りない?」を発見する4ステップ — 具体的シミュレーションでガバナンス不足を洗い出す

「何が足りない?」を発見する4ステップ — 具体的シミュレーションでガバナンス不足を洗い出す

「クラブの規模が大きくなると、これまで通用していた運営スタイルが限界を迎える」— これは総合型クラブ・少年団で必ず発生する変化です。会長の人柄や気合で回してきた運営を、仕組みで運営していく体制に移行する必要があります。しかし「うちのガバナンスに何が足りないのか?」を発見するのは意外に難しいもの。具体的なシミュレーション(避難訓練)が最も手軽で効果的な方法です。


クラブの成長段階で表出するガバナンス問題

段階 予算目安 典型的な問題
〜設立5年目 年間300万程度 会計処理・総会のあり方・教室運営
設立5〜10年目 年間500万程度 役員選出方法・クレーム対応・指導法の乖離
設立10年目〜 年間1000万〜 委託契約時の詳細・責任の所在

クラブ運営が大きく長くなるにつれて、関わるエリアや視野(クラブのみから地域全体へ)が広がるためです。


4ステップのシミュレーション法

  1. 想定:クラブが直面するちょっと先の未来を場面設定
  2. 確認:現行の定款・諸規程で対応できるか点検
  3. 抽出:不足している条文・項目を洗い出す
  4. 整備:条文追加・諸規程新設で穴を埋める

このプロセス自体がクラブの経営方針を明確にする手助けになります。


実例シミュレーション:会長が3ヶ月入院した

会長(理事長)が緊急入院。入院期間は3ヶ月、年度をまたぐ。その間に総会・指導者との契約締結・市町村委託事業の実績報告があり、いずれも会長の印鑑が必要。

まず確認すべき内容

項目 確認内容 文言例
定款:職務 会長不在時の対応 「会長が欠けた時は、副会長がその職務を代行する」
定款:総会 総会の招集者 「理事の過半数から招集請求があったとき」
経理処理規程 担当者が拠出できる金額 「1万円未満の備品購入は担当業務責任者に委任」
その他 印鑑の有無 会長之印に加えてクラブ之印があるか

他の頻出シミュレーション例

役員の選任問題

「創設者A氏が16年間会長を担っている(任期2年・再任8回)。周囲も功労者への遠慮から交代を言い出せず、実質終身雇用状態」
定款:役員の再任回数は無制限か?名誉会長という役職はあるか?

紛失した領収書の取扱い

「スタッフAさんが1万円自腹で備品購入。後日『あの1万円を返してほしい』と言うが、領収書は受け取った記憶がない。物品はある」
経理処理規程:立替払いの手続きは決まっているか?レシート紛失時のマニュアル(立替払精算申請書等)はあるか?

会費未払会員の対応

「70代の健康体操会員。年会費を『払う払う』というが実際払わない。昨年度も未払い」
定款・会員規程:会員資格喪失の文言はあるか?滞納が何年続いたら退会手続きを取れるか?退会マニュアル(口頭→文書通知→退会手続き)はあるか?


シミュレーション事例が思いつかない時のコツ

自クラブ内で想定場面を考えるのが難しい場合は、ChatGPTやGeminiに以下のようなプロンプトを送ると事例を提案してくれます。

「私たちのNPO法人(スポーツ団体)内で設置している定款および諸規程が適切かをチェックしたい。定款や諸規程のどの条文で対応できるかを判断したいから、実際に起こり得る具体的な想定場面をストーリー形式でいくつか提案して。」

職員研修のテーマとして取り上げても効果的です。


「気軽な気持ち」で取り組む

現行の定款・諸規程で対応が難しい場面が見つかっても、「うちやばいかも…」ではなく「うちもそういう問題が起こるようになったか!」という気軽な気持ちで受け止めてください。成長のサインです。


編集後記

ガバナンス点検は「今の運営スタイルで対応できないシチュエーション」を意図的に想像することから始まります。次回の役員会議で「シミュレーション研修」を30分組み込むだけで、多くの気づきが得られます。次のコラムでは「会員区分と指導者倫理規程」の実例を扱います。

— 地域スポーツ運営ナビ 編集部