人材・組織づくり

よくある事例と解決策 — 会員区分の見直しと指導者倫理規程の整備実務

よくある事例と解決策 — 会員区分の見直しと指導者倫理規程の整備実務

ガバナンス強化の実務で特にインパクトが大きい2つのテーマが「会員区分の整理」と「指導者倫理規程の策定」です。会員区分は議決権を保有する人を明確にするため、指導者倫理規程はクラブの理念と指導方針を守るために、いずれも早めに整備する価値があります。


会員区分:なぜガバナンス専門団体が強く指摘するのか

会員の区分(厳密には議決権保有者数)が明確でないと、「過半数」「3分の2」等の具体的人数も分からなくなり、これまで総会・理事会で得た議決が効力を発揮しない可能性があります。

NPO法人の一般的なひな形(△)

定款第6条:この法人の会員は、次の2種とし、正会員をもって特定非営利活動促進法上の社員とする。
(1) 正会員:この法人の目的に賛同して入会した個人及び団体
(2) 賛助会員:この法人の目的に賛同して賛助するために入会した個人及び団体

問題点: 入会申込を行った方はすべて正会員扱いで総会で議決権を有するため、未成年会員の取扱いが不明瞭・利用会員が増えても総会規模が変わりにくい。


解決案:「利用会員」を追加する3種構成

定款第6条(改定案):この法人の会員は、次の3種とし、正会員をもって特定非営利活動促進法上の社員とする。
(1) 正会員:この法人の目的に賛同して入会した個人及び団体
(2) 利用会員:この法人の事業を利用するために入会した個人及び団体。なお入会金・会費・その他必要な事項については、理事会の議決を経て別に定める利用会員規程による
(3) 賛助会員:この法人の目的に賛同して賛助するために入会した個人及び団体

この改定のメリット

  • 利用会員の詳細は利用会員規程に明記することで、理事会レベルで変更可能
  • 未成年会員の扱いは利用会員規程で個別に定められる
  • 「クラブメンバー」等の別名称で正会員との混同を防げる

利用会員規程の実務ポイント

  • 入会:未成年の場合は保護者(法定代理人)の同意と連帯署名を必須に
  • 入会金・会費:別表で定める(変更が理事会で可能)
  • 会費納入:保護者は会員本人と連帯して履行の責任を負う旨を明記

部活動地域展開への備え:「中学生会員」「小学生会員」等の年代別区分を別途設けず、全て利用会員扱いにして保護者連帯義務を明記すると規程がシンプルに保てます。


クラブの理念と違う指導者への対応

「うちのクラブは楽しみ重視なので、過度な技術指導や勝ちにこだわる指導は困る」と伝えても、「勝つことも楽しみの一つでしょ?」と返される — よくある衝突です。

原因は「楽しい」の定義がない

定款の目的に「楽しいスポーツライフを…」と明記していても、「本クラブにおいて“楽しい”とは何なのか」が指導者に伝わるように諸規程・手引き・指針に落とし込む必要があります。


解決案:指導者倫理規程を策定する

倫理規程に含めるべき5項目

  • パワハラ・セクハラ等の防止
  • 具体的な指導方針(クラブが定義する「楽しい」等)
  • 研修方法
  • 違反時の手続方法
  • 指導者契約書との連動(「倫理規程を遵守すること」を契約書に明記)

参考実例

  • あるスポーツ少年団:指導者倫理規程(指導者に特化)
  • あるクラブ:倫理規程(役員・職員・会員・指導員・選手・チーム全てに適用)

指導者のみ対象にするか、職員等も含めた全体規程にするかはクラブの規模・体制に合わせて判断してください。


倫理規程と処分規程の関係

倫理規程と処分規程を分けて策定する場合の対応:

  • 指導者管理規程」…登録方法・研修・解任方法など
  • 処分規程」…違反時の具体的な手続き方法

ただし公認スポーツ指導者資格の有資格者は、JSPOの処分規程も適用されるため、JSPOとクラブの2箇所から処分を受ける形になります。


今日から始めるアクション

  1. 現行の定款で「会員の種類」を確認
  2. 正会員以外の会員(子ども・保護者・体験参加者)が現状どう扱われているか整理
  3. 指導者との契約書に「クラブの理念遵守」の一文があるか点検
  4. 次回の役員会で「利用会員規程」の必要性を議題化


編集後記

会員区分と指導者倫理規程は、最初から完璧に策定する必要は全くありません。まずは策定してみて、運用しながら少しずつ強化していく。法的チェックが必要なら行政書士・司法書士等の専門家に依頼するのが確実です。

— 地域スポーツ運営ナビ 編集部