夏の練習・大会で熱中症の事故が起きれば、子どもの健康被害はもちろん、団体の安全配慮義務が問われます。「気をつけよう」の声かけだけでは防げません。必要なのは測る・冷やす・補給する・日陰を作る・緊急時に備えるという道具立てと、中止判断のルールです。クラブ・少年団の実務目線で整理します。
熱中症対策は「測る」から始まる
気温30℃でも湿度が低ければ運動可能なことがあり、逆に気温28℃でも湿度が高ければ危険なことがあります。判断の基準になるのがWBGT(暑さ指数)です。日本スポーツ協会の「熱中症予防運動指針」では、WBGTに応じた運動の目安が示されています。
| WBGT | 区分 | 運動の目安 |
|---|---|---|
| 31℃以上 | 運動は原則中止 | 特別の場合以外は運動を中止。特に子どもは中止すべき |
| 28〜31℃ | 厳重警戒 | 激しい運動や持久走は避ける。積極的に休憩を取り水分・塩分補給 |
| 25〜28℃ | 警戒 | 積極的に休憩を取り、水分・塩分を補給 |
| 21〜25℃ | 注意 | 死亡事故が発生する可能性がある。運動の合間に水分・塩分補給 |
つまりWBGT計を持っていない団体は、中止判断の土台がないということです。黒球式の携帯型が3,000円前後で買えるので、これが最優先の投資です。
5つの役割で道具を揃える
| 役割 | 道具 | 目安予算 |
|---|---|---|
| 測る | WBGT計(黒球式) | 約3,000円 |
| 冷やす | ネッククーラー/クールタオル | 1,000〜5,000円 |
| 補給する | スポーツドリンク粉末(大容量) | 約6,000円 |
| 日陰を作る | タープテント | 約9,000円 |
| 緊急時に備える | 経口補水液・冷却剤入り救急キット | 約4,000円 |
合計2〜3万円。夏の1シーズンで会員1人あたり数百円の投資で、練習中止判断の根拠と緊急対応の体制が揃います。粉末ドリンクは500mlペットボトルを買い続けるより大幅に安く、ゴミも減ります。
モノだけでは防げない — 運用ルール3つ
- 中止基準を事前に明文化する——「WBGT31℃以上は中止」「判断者は当日の統括責任者」と規約・運営マニュアルに書いておく。現場の空気で「せっかく集まったからやろう」となるのを防ぐ唯一の方法です
- 練習前の体調チェック——睡眠不足・朝食抜き・発熱明けの参加者は熱中症リスクが跳ね上がります。受付時の一言確認をルール化する
- 応急対応フローの共有——「涼しい場所へ移動→衣服を緩めて冷却→水分補給→意識がおかしければ迷わず救急車」。救急セットの中身と合わせて、救急セット&AEDの選び方で体制を整えてください
中止基準の明文化は、改正スポーツ基本法で広がった「安心・安全」の考え方とも直結します。保護者への説明材料としても機能します。
出典
編集後記
WBGT計は「買って終わり」になりがちな道具の筆頭です。毎回の練習で受付係が測って記録用紙に書く——ここまでセットで運用に落とすと、万一の際に「団体として基準を持って運営していた」という何よりの証拠になります。
— 地域スポーツ運営ナビ 編集部