「先日のイベントは45人参加」「今回は8人だった」と、集客をイベントごとにゼロからやり直しているクラブが多いのが実情です。新規集客のコストは高く(無作為チラシの反応率は0.3%=1万枚配って30人)、持続可能な集客の鍵は「定着」と「口コミ」にあります。本コラムでは、過去参加者リストの資産化と、口コミを広げる科学的根拠を解説します。
クラブしか持っていない資産:過去参加者名簿
クラブ関係者が見落としがちな最強の資産は、過去の参加者名簿です。
- 体験会やイベントで得た参加者名簿
- 退会してしまった会員リスト
これらは単なる履歴データではなく、「次回イベント参加者予備軍」または「クラブ会員予備軍」のリストです。過去にイベントへ申込みをした時点で、活動に対して関心があることが証明されています。STP理論で言えば「既にSTPの分析を終えている集団」と言えます。
実例:ある地域スポーツ団体の集客改革
- あるイベントの想定応募60名に対し、実際の申込は約550名(コロナ禍で保護者がイベントを探していた背景あり)
- 会場の問題で多くを断ることに
- ただし申込時にメールアドレスを取得 → 550名分の「子どものスポーツに関心のある層」の情報を獲得
- 以降のイベントはその層にメール案内するだけで集客が完結
- 件名例:「前回、ご参加が出来なかった皆様へ新しいイベントのご案内」
今ではほとんどチラシ配布せず、メールのみで集客が可能に。1度取得した名簿が長期的に資産化された好例です。
今すぐやるべき:継続的な連絡手段の取得
そもそもメールアドレス等を収集していないクラブは、まず「お申込みを頂いた方と継続的につながれる手段」を必ず取得してください。
取得すべき情報
- メールアドレス
- LINE公式アカウントへの登録
- 電話番号(高齢者向け)
- FAX番号(高齢者向け)
連絡手段があれば、次回イベントの告知コストが劇的に下がります。
新規と定着のコスト比較
| 集客タイプ | コスト | 反応率 |
|---|---|---|
| 新規(無作為チラシ) | 1万枚数万円 | 0.3%(30人) |
| 過去参加者へのメール | ほぼゼロ | 数%〜数十% |
| 会員からの口コミ紹介 | 特典コスト | 20〜40% |
「集めること」と同じくらい、「続けてもらう(定着してもらう)」ことがROIの観点で圧倒的に有利です。
口コミが広がる科学的根拠
鈴田・谷口(2015)の研究では、総合型クラブへの満足度と新規会員獲得行動(友人を誘う行動)の関係を統計的に分析しました。
友人を誘う人と誘わない人の満足度の差
結果、「プログラム外の項目」で満足度に大きな差があることが判明:
- 活動前のクラブ会員との交流(★★★)
- 活動前のクラブスタッフとの交流(★★★)
- 活動後のクラブ会員との交流(★★★)
- クラブの活動内容の情報提供(★★★)
- 活動後のクラブスタッフとの交流(★★★)
- クラブ内での交流会やイベント(★★★)
- 活動外でのクラブ関係者との交流(★★★)
- 要望への迅速な対応(★★★)
一方、「指導の分かりやすさ」「技術向上」「用具設備」は友人紹介行動との有意差なしでした。
研究結果が示すこと
口コミを増やしたい・会員に友人を誘って欲しいのであれば、プログラム外(雑談や交流の場)の満足度を上げることが決定的に重要です。
口コミサイクル
- ニーズを満たす仕掛け(例:あるクラブの交流の場づくり)
- 会員の満足度が高まる
- 友人へお誘いする行動が生まれる
- 新規会員が入会する
継続的なニーズ調査の方法
既に入会している人への継続的なニーズ調査も重要です。
- 終了後アンケート(教室ごとに実施)
- 日々の雑談(休憩時間・活動前後)
- 会員同士の関係性についての観察
マーケティング全体像のまとめ
ここまでの4部作を整理すると:
- ニーズとウォンツを理解する(前提)
- STPで分析(誰に届けるか)
- チラシに落とし込む(申込パターンは?)
- 配布・案内 → 集客 → 名簿化 → 会員リストの獲得
- 参加者への定着(ニーズを満たし続ける)
- 友人へのお誘い → 新規会員の獲得(口コミ)
今日から始めるアクション
- 過去1年間のイベント参加者リストを1つのファイルに集約
- 連絡先が未取得のイベントは、今後必ず取得する運用に変える
- 次回イベントは新規チラシと並行して、過去参加者へメール案内
- 教室後の雑談時間を10分意図的に設計する
- アンケートに「クラブの雰囲気」の項目を追加
編集後記
「集めること」に力を入れているクラブは多いですが、「集まり続ける仕組み」に力を入れているクラブは少数派です。定着と口コミの科学に投資するクラブが、長期的には最も強い集客力を持ちます。まずは過去参加者の名簿化から始めてください。
— 地域スポーツ運営ナビ 編集部