「この教室、あと何人来れば黒字かな?」——クラブ運営でよく交わされる会話です。しかしその計算、教室の月謝から会場費と指導者謝金を引いただけで出していませんか。それだと本当の収益性は見えません。抜けているのは「管理費」です。
事業費だけの比較は危険
2つの教室を比べてみます(いずれも週1回・参加9名の例)。
| サッカー教室 | ヨガ教室 | |
|---|---|---|
| 月謝 | 3,000円 | 2,000円 |
| 会場費(回) | 2,000円 | 1,000円 |
| 指導者謝金(回) | 5,000円 | 3,000円 |
これは事業費(その教室に直接かかる費用)だけの比較です。しかし実際のクラブ運営には、これ以外の費用がかかっています。
「管理費」を忘れていないか
教室の開催有無にかかわらずかかる費用が管理費です。
- 事務局の人件費(会場の鍵開け、保護者連絡、名簿管理など)
- 事務所の家賃・光熱費
- 通信費・消耗品費・保険料 など
これらは特定の教室に直接ひも付きませんが、クラブ全体を回すために必要です。管理費を各教室に積算しないと、本当の収益性は見えないのです。
管理費を按分する2つの方法
年間の管理費合計(例:100万円)を各教室に割り振ります。方法は主に2つです。
方法1:均等に分配。教室数で単純に割ります(4教室なら1教室あたり年25万円=月約2.1万円)。この管理費を上乗せすると、「事業費だけなら黒字」に見えた教室が「あと5人必要」に変わることがあります。
方法2:人気度で比重を変える。立ち上げたばかりの教室は軽く、人気で定着した教室に多めに負担してもらう配分です。「テニスは人気だから多めに、ラグビーは新設だから少なめに」といった調整ができます。
あるクラブでは、「新規教室は毎月700円以上クラブに残る算段がつかないと開講しない」という基準を、管理費を定額で積算したうえで設けています。
これが「原価志向」の考え方
ここまでの、かかる費用を積み上げて価格や採算を判断する考え方を原価志向といいます。価格の決め方には需要志向・競争志向もありますが、総合型クラブはまず原価志向を押さえるべきです。需要志向・競争志向は、地域住民や競合との兼ね合いで価格競争に巻き込まれるリスクがあるからです。
特に部活動の地域展開では、指導者謝金・会場費(事業費)は市町村予算に計上されても、事務局経費(管理費)は対象外とされることが多く、注意が必要です。管理費の考え方は管理会計の基本、規模別の費用バランスは予算規模別ベンチマークもあわせてどうぞ。
編集後記
大事なのは金額の正確さより、「どうやって管理費を按分するか」をクラブ内で決めておくことです。ルールが共有されていれば、教室ごとの採算判断も新規開講の判断もぶれなくなります。まずは自クラブの管理費が年間いくらか、洗い出すところから始めてみてください。
— 地域スポーツ運営ナビ 編集部